⑩TMS研メルマガ一覧表

メルマガ第35号

私はなぜ『設計部門の「見える化」』セミナーをやっているのか?

 私が過去おこなったセミナーで一番受講者が多いセミナーは『事務所(間接)業務の「見える化」セミナー』でした。毎回10~15名の受講者に来ていただきました。受講者アンケート結果もまずまずでしたので、私は色々なセミナー会社に営業をかけました。その中で設計者向けに特化した某セミナー会社がありました。そちらの社長さんから「うちは設計者しか来ないからセミナーのタイトルを『事務所(間接)業務』ではなく『設計部門』にしてくれないか?」と言われた時、さすがの私も正直一週間ほど悩みました。なぜなら多種多様な職歴を持つ私ですが、「設計」は業務として携わった経験がなかったからです。

 工学部出身でもなく、設計者でもエンジニアでもないこの私が、設計者の方を前にお金をいただいて講義などしていいものか真剣に悩み、前職の上司(部長、エンジニア)のお宅に押し掛け、相談しました。すると元上司はこう言いました。

 「角川、お前は間接業務の「見える化」ツールAIOSを会社全体に広めるのが夢だったよな。その時一番抵抗しそうな設計部を説得するためにAIOSのサンプルを設計部のものにしよう、と俺と一緒に作成したよな。その後例の事件(認証偽装による製品の無期限出荷停止)があって結局AIOSを全部署で作ることになったが、あの事件の発端は設計部だったよな。しかもその張本人のN設計部長はお前の高校の先輩で、日曜や元旦にいつも休日出勤していたいわば戦友じゃないか。N部長の『弔い合戦』と思って引き受けたらいいんじゃねぇか。まあNちゃんもまだ死んじゃあいねぇと思うけどよ(笑)」

 どうです、この無責任ぶり(笑)。しかし元労働組合委員長だけあって、妙な説得力がありました。その後一週間考えた末、私はついに『設計部門の「見える化」による生産性および業務品質向上方法』と銘打ったセミナーの講師を引き受けることとしました。その理由は次の通りです。

  1. 従前より忙しかった設計部門が、ISO9001,14001等の普及によりますます忙しくなり、いわば「非常事態」に陥っていることを知っている。
  2. ISO9001事務局の経験と、設計から品証までの一貫業務管理システム導入事務局経験から、設計業務の概要は理解している。
  3. 父親がメーカーの研究開発者だったため、設計者に対し親近感がある。
  4. 前職の総務部で安全衛生事務局をしていた時、設計部でメンタル不全者や健康障がい者がしばしば発生し、対策に苦慮したことがある。

 よくよく考えたら、私自身高校時代まで将来の夢は設計者(建築家)だったことを思い出しました。そこで今現在過重労働に苦しんでいる私のかつての「あこがれの存在」設計者が私の開発したAIOSで少しでも救えるなら、多少の無茶は引き受けようじゃないか、などと年甲斐もなく青臭いことを思い、このセミナーの講師を引き受けた次第です。

 さて、いつものセミナーより若干緊張して受講者の前に立った私の前に座っていらしたのは、全国津々浦々から来ていただいた設計者の皆さんでした。ただし他のセミナーの受講者に比べ、なんとなく顔色が悪く疲れている印象を受けました。そこで私は「この方たちをAIOSで何とか救いたい」との一念で、必死に講義した覚えがあります。

 終わってみればあっという間の6時間、受講者から回収したアンケート結果はまずまずと言ったところでした。いつもより7~8点平均点が低かったのは「設計部門特有の問題(アイデア創出方法のことと思われます)に触れられていない」という方が数名いたためでしょう。アンケート結果から、私の開発した業務「見える化」ツールAIOSは設計部門においても有効であることを確信することができた次第です。

 その後このセミナーは合計4回開催され、受講者総数も100名を超えました。今となっては一見無責任とも思えた元上司に感謝しています。住宅ローンとこれからいくらかかるか分らない2人の子供を抱えた私が、会社を早期退職してまで世に訴えたかったAIOSの必要性と有効性ですが、肝心のセミナー受講者が集まらないのでは意味がありません。そういった意味では『事務所(間接)業務の「見える化」』だったセミナーを『設計部門の~~』に変えろといってくれた某セミナー会社の社長さんにも感謝しております。おかげさまで受講者数が、従来に比べ倍増しました。

 私はいつも『「見える化」セミナー』の冒頭で、「「見える化」の遅れが招いた3つの悲劇」として、会社合併→リストラと続く過程で発生した①総務部長のメンタル不全発症②総務部員の健康障害③設計部長の認証偽装事件、の3つをご紹介しています。これは「見える化」の価値を受講者に伝える目的で行っているのですが、③設計部長の認証偽装事件の説明をするときにいつもN部長の顔を脳裏に思い浮かべています。

 プロパー社員で最優秀だったN部長、残業代も出ないのに60歳目前の身体で毎日深夜まで働いていたN部長、日曜日に会社でいつも私と顔を合わせていたN部長、元旦も朝から働いていたN部長、これほどまでに会社に尽くしたのに事件の責任を一人で背負わされ、4,000万円を超える退職金を没収され懲戒免職の烙印を押されたN部長、2人しかいない部下の1人をリストラで無理やり奪われ仕事がどうにも回らなくなり、やむを得ず7年前の試験データの日付だけ変え監督省庁に提出したN部長、その書類を作成したときあなたはとても寂しかったのでしょうね。

  N部長、あなたのような悲劇に会う人を一人でも救いたくて、角川は今日も設計者の前でお話をしています。この世ではもうお会いできないかもしれませんが、いずれあの世でたっぷりと積もる話をしたいものですね。その頃、あなたを追い詰めた役員のKさんはきっと地獄に落ちていることでしょう(笑)。

 さて今回のメルマガはいつもと趣を変えて、なぜ設計者でもない私が『設計部門の「見える化」セミナー』をやっているのかについてお話しさせていただきました。セミナーの中では時間の関係と内容があまりに私的すぎるため割愛していましたが、セミナー講師の「想い」を皆様にお伝えしたくて書かせていただきました。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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