2020年4/22(金)の東京でのセミナーを最後に、私が受注していたセミナー・社内セミナー・コンサルはすべてキャンセルとなり、妻の幼児英会話教室も閉鎖を余儀なくされました。全収入源を絶たれた我がTMS研がその後、①業務のオンライン化 ②茨城県内での新規開拓、でなんとか生きながらえた話は以前お話しした通りです。しかし実はもう一つ新たに始めたことがあります。それは『ミラサポ』による飲食店の経営支援です。
「えっ?工場出身の角川さんが飲食店の支援?大丈夫かよ…、つぶしちゃうんじゃないの?」と思った、そこのあなた!! 今まであえて言いませんでしたが、こちらも5件の実績があり、成功率100%です。全店とも集客が300%向上しました。
ただし飲食店の支援は、製造業の支援と異なる点があります。それは経営者の質です。製造業の場合、取引先に鍛えられているせいか、多少の無茶な要求は甘んじて受ける習性が身についているのですが、飲食店の場合、個人客相手のため、「自分のやりたいことのみを、自分のやりたいようにやる」習性の方が多いようです。
今までやっていたやり方がよくないから集客が悪化しているのに、それに固執しているようでは、どんな名医でもその患者を救うことはできません。私が飲食店のコンサルにおいても成功率100%なのは、クライアントを厳選しているからです。「俺様」状態の経営者は、こちらからお断りしています。
バブル崩壊後の『失われた30年』で、日本の事業所数は減少に歯止めがかかりません。そんな国は先進国のみならず、OECD諸国中でも日本だけです。その事態を改善すべく政府 (中小企業庁) は、今まで経済的事情によってコンサルティングの対象外だった中小・零細事業所の救済策として『ミラサポ』を2013年にスタートしました。茨城よろず支援拠点様のご推挙により、専門家に認定された私は、久々に飲食店の支援活動を再開しました。現在、土浦市・石岡市で複数支援中です。
そんな中で以前から気になる個人事業主がおり、こちらから声をかけたところ、支援先の一つとなりました。今号のメルマガの主人公、料理教室のB先生(女性・68歳)です。東北地方の旧家 (庄屋) に生まれたB先生は、着付け、書道、料理のすべてがプロ級の才女で、大学では民俗学を専攻された日本文化の正統な継承者ともいえるお方です。そんな立派なお方が、なぜ私の支援を必要としていたのでしょうか?
B先生のお悩みは、生徒数の減少でした。現地調査およびヒアリングの結果、この料理教室には下記の問題点があることが発覚しました。
(A)は料理教室が乱立する状況において、致命的です。和洋・中華・インド料理までできるB先生の引き出しの多さが、逆に災いしています。ヒアリング調査で、寝たきり生活の義父(93歳)を先生の心づくしの料理で元気にさせ、普通の暮らしに復帰させたエピソードを聞き、今後は「生きる気力・体力を取り戻す命のレシピ」に特化することとしました。競合に対し、強烈な差別化が図れました。
(B)は10年前初めてB先生宅を訪問した時に気づいていたのですが、状況はさらに悪化しており、3LDKのマンションにはモノがあふれていました。その結果、ご主人は実家へ、後継者である娘さんは東京へ逃げてしまい、先生も寝室を失い居間のソファーがベッド代わりです。大量の物によって、人間が住居から駆逐される寸前でした。
さっそく5S教育を実施したところB先生の魂に火が付き、その場で80脚あったカップ類を15脚に減らしてしまいました!! その後、1日1種類の整理 (物量の最小化) を日課としたので、この問題は解決のめどが立ちました。5Sを知らないと、仕事はおろか家庭も崩壊することを改めて実感した次第です。
(C)は前回の指導中に発覚しました。大学卒業後すぐに結婚された先生には、人に使われた経験がありません。今まで好きなことを好きなやり方で行い、生きてきました。顧客、上司、他部署、部下から日常的に無理難題を押し付けられているメルマガ読者の皆さんから、まったく共感を得られないことでしょう(笑)。
会社に属している皆さんは、たとえ無理だと思ってもその場で断らず、一度やってみてから 「すみません。私の力不足でできませんでした。なにかいいアイデアはないものでしょうか?教えてください」と下手に出つつ、要求が無理であることを相手に間接的に伝えるくらいの知恵(世才)はお持ちのことでしょう。
B先生には、その世才が欠落していました。私の提案を言下に否定するのです。いささか頭に来ましたが、そんなことでは事態は改善しません。いったんコンサルを打ち切り、精神教育に切り替えました。目的は「できない理由より、やる方法を考えよ」精神の定着です。ちなみにB先生の特徴は次の通りです。
私は「できない理由 (やらない言い訳) を探すより、なんとかして実現する方法を考えよ」 「100点 (自己満足) を目指すな!! 80点 (顧客満足) を目指せ!!」他3枚の標語ポスターを印刷・パウチ加工し部屋の壁に掲示、1日2回音読し、実施記録をつけるよう指導しました。3週間やれば習慣として定着するので、脳裏に焼き付くことでしょう。
しかし今回のクライアントは68年間やりたいことだけをやりたいようにやって生きてこられた古強者です。この程度では大した成果は期待できません。私の「奥の手」は、下記YouTube動画の視聴でした。
① 私は小学生の時、親の命令で剣道を週3回習っていたので分かるのですが、片腕しかないのに剣道をやるなんて正気の沙汰とは思えません。しかし彼は両親を息子に対する良心の呵責 (かしゃく) から解放したい一心で、剣道を続けました。その結果、通常は「弱み」でしかない片腕であることを「強み」に転換する戦法を編み出し四段位を取得、さらには大学の選手権で90キロの巨漢剣士を相手に50キロの貧弱な身体の隻腕剣士である彼が見事に勝利するのです!!
インタビューで彼はこう言いました。「今考えると、片腕だったからこそ、ここまで来ることができた気がします」
② は生まれつき耳が聞こえない(聾者)少女の事例です。剣道の道場を見学した彼
女は「これこそ私のやりたいことだ!!」と入門します。最初は心配げに見つめていた先生は、彼女が剣士として大変優れた資質の持ち主であることに気づきます。聾者のため人の気配を察知する能力が健常者に比べ格段に優れている点と、唇の動きで言葉を読むため集中力がズバ抜けていることです。「災い転じて」ですね。
道場の先輩が筆談で指導してくれ、みんなに暖かく指導された彼女はめきめきと頭角を現し、高校生の全国大会に出場します。自信に満ち溢れた彼女の表情には、障碍者にありがちなネガティブ感情はみじんもありません。実に魅力的な若者です。どんな不況の時代でも、彼女を採用したがる会社は多いことでしょう。
③ は以前紹介したので、簡単に説明します。譜面も読めない50歳の漁師のおじさ
んが1日7時間の練習を7年続け、難曲『ラ・カンパネラ』を習得します。
上記3本の動画を続けてみたB先生がこう言いました。
「いままで「これはできない」「あれもできない」といっていた自分が恥ずかしくなりました」
「こんな重度の障害を持った方だって「やる気」一つで、健常者でも容易になし得ないことができることがよくわかりました」
「私に足りないのは「やる気」「本気」「死ぬ気」だったのですね」
「Where there is a will,there is a way (意志あるところに道は通ず) のポスターも作って、毎日唱和します!!」
「もう二度と角川さんに「できません」なんて言いません」
「心が折れそうになった時は、この動画を見て「なにくそ」と思うことにします!!」
一を言えば十を知る優秀なクライアントに恵まれた私は、コンサルタント冥利に浸りながら料理教室を後にしました。これからB先生と二人三脚で作り上げていく『生きる気力・体力を取り戻す命のレシピ』は、高齢者・介護者双方に大きな意味を持ち、少子高齢化社会に突入するこの国では大きな価値があるはずです。
ところで今回のメルマガ読者アンケートでも、2年前に実施したAIOS作成実態調査でも、やれなかった (やらなかった)人の理由は次の通りでした。
① 担当者だから ②経営者ではないから ③総務マターだから ④ まだその時期ではないと判断するから ⑤女性だから ⑥時間がないから
できない理由はいくらでもありますが、そんなものを列挙して何か事態が好転しますか?あなたが言っていることは「できない理由」ではなく、ひょっとして「やらない言い訳」ではありませんか?派遣社員の女性が一人でAIOSを作成した事例報告も、私は聞いています。担当者が過労死寸前の課長を助けるべくAIOS作成に挑んだ事例もあります。
料理教室のB先生も68年間ずっと「やらない言い訳」を探して生きてきました。しかしもうそんなB先生はこの世に存在しません。人生でなすべきことをついに見つけた、やる気と希望に満ち溢れた68歳の若者が私のクライアントです。
さあ、次はあなたの番です。B先生のように68歳まで会社はあなたを雇ってはくれません(笑)。今やらなくて、いったいいつやるおつもりですか?人生は思いのほか短いですよ。
もう「できない理由」を探すのはやめませんか?