意外に思われる方もいるかと思いますが、私は新聞を読みません。週刊誌も読みません。テレビも見ません。マスコミによる世論操作から距離を置きたいのと、読む時間が惜しいからです。その代り、ネットニュースと月刊誌・単行本で情報を入手しています。
まだテレビを見ていた数年前、若いころ好きだった『朝まで生テレビ』がまだやっていることに驚き久々に視聴したところ、三浦瑠璃さんという気鋭の国際政治学者が出演されていました。その美貌もさることながら、一切歯に衣着せず言いたいことをズバズバ言っており、その内容と知性で他のパネラー諸氏を圧倒しているではありませんか!! 受講者アンケートで「辛口講師」と評される私など、彼女の足元にも及びません(苦笑)。すごい女性が出て来たなぁ、と感心した記憶があります。
もう一人の橋本徹氏については説明は不要でしょう。人気番組『行列のできる法律相談所』出演で人気を博し、その後大阪維新の会代表 → 大阪府知事 → 大阪市長と、政治家として大活躍された方です。
この二人の対談集『政治を選ぶ力(文春新書)』を書店で見つけた時は「これは「学会のライオン」と「政界のトラ」の一騎打ちだな。さすが文芸春秋の編集者、えぐい企画だなぁ」と心中つぶやいたものです。即購入です。
皆さんにもぜひお読みいただきたいのですが、ここでざっくり同書の内容を紹介いたします。「リアリズムは理想のためにある(三浦)」 「腹黒政治が日本を救う(橋下)」 というお二人が批判を恐れず、炎上を恐れず、堂々の議論で真っ向から勝負しています。主な内容です。
さて、ここからはこの本のどこに私が感心したかについてお話ししていきます。上記①~⑩を見て、私がこの本を紹介した理由が何となく分かった方は鋭いです。②は「組織マネジメントに数値データを。従業員アンケートの正しい使い方」、④は「会社経営 目指すべき指標は経常利益? 株価? 顧客満足度? 従業員満足度?」、⑥『従業員性悪説』に基づく欧米流マネジメントシステムこそ諸悪の根源、等々読み替えると、私の著作のようです(笑)。テーマこそ「政治」と「組織マネジメント」と異なりますが、お二人の考え方は私の腑に落ちるものでした。
なにしろ「ライオン」と「トラ」の一騎打ちですから、意見が合わない時は激しく火花を散らすわけですが、その理由は私見では次の3点によります。
ここでは①について取り上げたいと思います。三浦さんは学者出身なので古今東西の政治および政治家について実によくご存知ですが、東大講師 → シンクタンク代表という経歴の通り、実務経験がなく発言内容も理想論に傾きがちです。それに対して橋下さんは弁護士 → 政治家という経歴の通り、現場たたき上げの実務家です。世の中きれいごとでは生きていけないことを誰よりも身体で分かっておいでです。また新政党を立ち上げ、大阪府、大阪市と巨大組織のトップに立ったご経験から、組織マネジメントの重要性について深く認識されています。組織改革には組織に「熱量」が必要不可欠、という主張もまったく同感です。
政界のアウトサイダーとして「不思議の国」大阪府議会および大阪市議会を見た橋下さんの目から、議員は大きく次の二種類に分類できるそうです。
①雄叫び派 | … | 自分の主張を声高に叫び、他人の意見に耳を貸さない。 |
②きれいごと派 | … | 実現不能な理想論を大所高所から述べる。 |
私の経験では①は労働組合幹部に、②は親会社から来た人や高学歴の人・難しい資格を取得した人が多かった記憶があります。①②に共通していることは、会社利益向上になんら寄与しない、という点です。つまり「やらないヤツ」ということです。
そんな議会の実態を目の当たりにした橋下さんは、公約実現のために「第三の道」を選びます。それが上記①②の顔を立てつつ自身の政策実現の道を探る『腹黒派』です。そうして①大阪市営地下鉄民営化 ②大阪城公園の管理民営化、等々役人の手から既得権益を取り上げる数々の政策を実現していきました。それらの諸施策により、出金(経費)を入金(税収)に転換できました。
これらの業績はなぜかしら新聞ではほとんど報道されなかった(その理由は皆さんご賢察ください)ようですが、実に立派な仕事をされています。
こうして見ると橋下さんは「やるヤツ」であることがよく分かります。世間には言うだけで自らは決して「やらないヤツ」は腐るほどいますが、使命感を持ってリスクをものともせず「やるヤツ」はほとんどいません。「やらないヤツ」と「やるヤツ」のどちらが世の役に立つかは説明を要しないでしょう。
あなたは「やるヤツ」「やらないヤツ」のどちらですか?