私が20年来住んでいる茨城県石岡市は、大和朝廷の版図の最北端に位置します(これ以北は蝦夷地)。常陸国は最大の面積を誇り、農業・漁業とも豊かな収穫で、当時「常世の国」と称される富裕自治体でした。その国府であった石岡市も行政・経済・文化の中心として栄えました。
それから千数百年後の昭和30年代、石岡市は財政破たんの危機に瀕します。膨らむ一方の財政支出を支える歳入が、一向に伸びなかったのです。大昔からの主要産業、農業・製造業(生糸・酒・味噌・家具等)・商業では、もはや同市を支え切れなくなったのです。
石岡市には、その名も『竜神山』という勇ましい名前の山があります。由緒と歴史のある山なのですが、20年前に初めて見た時「みっともない山だなぁ…」と思いました。異様な形をしていたからです。その理由は石岡市史を読み、分かりました。財政危機に瀕した石岡市が石灰岩(セメントの原料)採掘場として、この山を民間業者に売却したのです。土地の古老はこの山の無残な姿を見るたび、「竜神様がその身を削って石岡市を助けてくれた」と心中涙するそうです。
これで当面の危機は脱したものの、財政を支える基幹産業がないという状況は変わりません。そこで市は茨城県内初となる『工業団地』の造成に着手しました。現在茨城県内に162ある工業団地の第一号は、石岡市の『柏原工業団地』なのです。同団地には松下電器(現パナソニック)や東洋製罐等々の大メーカーが進出してくれ、多大な雇用を創出してくれました。
さて、石岡市の郷土史になど全然関心がないと思われる皆さんに、私はなぜこんな70~50年前の古い話をしているのでしょうか? その理由は、皆さんのお勤めの会社でこれから起きること、また生き残るためにやらなければならないこと、この2つがこの事例に含まれているからです。「これから起きること」とは①福利厚生費削減 ②教育費削減 ③残業・休日出勤禁止 ④遊休資産売却等です。竜神山売却が④にあたります。私の前職の親会社が赤字に転落した際も、前述の①~④全部をグループ全社で徹底的に実施しました。
その上会社創設以来初となる大リストラも敢行したのですが、その甲斐もなく5年間赤字を垂れ流し続けた挙句、現経団連会長によりかつて『業界御三家』の一角だった親会社は解体されました。その理由は石岡市の工業団地造成にあたる、新規事業の立上げ(生き残るためにやらなければならないこと)に失敗したからです(正確には何もせず)。
ここで話は変わりますが、皆さんの人生を振り返ってみた時、当時「ピンチ」としか思えなかったことが、実はその後の人生を大きく変えた「チャンス」だったことはないでしょうか? 私事ですが、親会社が傾き前職がリストラを実施したおかげで、私は念願だった経営コンサルタントになることができました。早期退職の割り増し退職金が開業資金となったからです。今日立派な会社にお勤めの皆さんを前に僭越ながら講義させていただいているのも、親会社の経営者が無能だったお影です(笑)。
さて皆さんが今回の「会社存続の危機」を後年「今考えれば、あれがチャンスだったなぁ…」と思える施策はあるのでしょうか? それは『組織マネジメントシステム(OMS)』の自社構築による管理利益計上です。管理利益とは、『事務所埋蔵金(添付資料③)』の発掘です。OMSにより次々と埋蔵金が発掘されれば、その総額は新規事業を1つ立ち上げるのと同等もしくはそれ以上の利益を御社にもたらします。しかもそのための初期投資は人件費のみ、という低リスクです。
そんないいことずくめの『組織マネジメントシステム(OMS)』ですが、その自社構築には2つのネックがあります。1つは結構手間暇がかかることです。特に御社がISO9001の認証を取得しておらず、業務マニュアルを1から整備する場合は時間を要します。もう1つは『OMS構築』という間接業務改革に対する心理的抵抗です。
ではなぜ、一見会社(日本)存続の危機に見える現在が「チャンス」なのでしょうか? それは仕事が薄いからです。OMS構築や業務マニュアル作成は、バタバタした職場環境では実施困難です。そういった意味で現在政府が推奨している在宅勤務は、これらの作業には最高の環境と言えます。
また業務改革(手術)に対する心理的抵抗も、会社存続の危機である今なら全員が同意し協力してくれます。もはや業務改善(投薬治療)程度では会社が持たないことは誰の目にも明らかですから。
今まで「ん? 組織マネジメントだと? そんなもの何の役に立つんだ? こっちは目の前の仕事だけで死にそうなほど忙しいんだぞ!! そんなもんに費やす時間なんかどこにあるんだ、このボケ!!」と思っていた、そこのあなた!! 今までは部下を怒鳴りつければなんとか回っていた職場も、在宅勤務ではどうしようもありません。組織マネジメントシステムなしには、部下の遠隔操作は不可能です。
また上司に管理されないと仕事が進められない『上司依存症』の皆さん、今までは何とか業務をこなしてこれましたがもうダメです。上司が身近にいなくなった今、自分で自分を管理するセルフマネジメントシステムなしには業務は進捗せず、生産性も上がりません。そうこうするうちにご自身がリストラ候補になりかねません。
これはウソでも脅しでもありません。全社員を在宅勤務に切り替えた某社で実際に起きたことです。両マネジメントシステムの不在により、同社は組織崩壊を起しました。
今後しばらく続く大不況の時代が明けた時、今存在しているものの多くが姿を消すことでしょう。その1つが「事務所」ではないでしょうか? ウィルス感染防止の目的で間接員を在宅勤務にシフトした会社で、パンデミック終了後にきっとこう思うことでしょう。「最初はどうなることかと思ったけど、在宅勤務でもなんとか仕事は回るな。職場の人間関係やパワハラ・セクハラにも悩まされないし、何より地獄の通勤ラッシュから解放されたぞ!! その結果、生産性も向上したし、自分の時間も増えた。今考えると、なぜ毎日会社に出勤していたのか不思議だな。ひょっとして、悪い夢でも見てたのかな?(笑)」
後に振り返れば、我々間接職従事者は戦前から連綿と続く「事務所勤務」という呪縛から解放される転換期に今いるのかもしれません。この転換期を乗り切るには、組織マネジメントシステムとセルフマネジメントシステムが必要であることは言うまでもありません。この両システムの「ある・なし」が御社存続or消滅の一つのキーとなることでしょう。
時代の転換期では、業界トップに代わり御社が業界の覇者となることも、決して夢物語ではありません。そう考えれば、実に夢のある時代が来たと言えます。ただし、その夢が実現するかどうかは、このメルマガを読んだあなたが、ただちに行動を起こすかどうかにかかっていることをお忘れなく。
昨日花見に行った帰りに柏原工業団地内を通った際、「50年前、当時の市長が団地造成を決断しなかったら、この市は今一体どうなっていたのだろうか…」としみじみ思いました。
さあ、あなたは今回の「チャンス」をどう活用するおつもりですか?